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三月 / 2010年3月6日
   なんと気がついたら2月が終わっていました。ここを忘れていたわけではなく、あまりに凄まじい速度の動きで2月を2月と認識する間もなく3月にいたのです。というより、時間の感覚が曖昧になっています。昨年末からiPhoneAppの販売を始め、そこからプロモーションをどうするのかを考えながらホームページ作ったり、英語圏でのプロモーションに四苦八苦しながら次のアプリをリリースして、審査に異常に時間がかかってやきもきしつつ、iPadの発表でiPadAppの開発競争に身を投じた結果です。iPadAppのことを考えながらiPhoneAppのアップデートもして機能を充実させていきながら、さてこのiPhoneAppたちをiPadでそのまま使えるようにするには、どのくらい手を入れるべきなのかそれとも入れないべきなのかも考えて、そうこうしているうちに2月が過ぎ去っていたのです。

   処理すべき事柄が多すぎて、半分パニックなのでしょう。本来であれば、人を3人はいれて教育しながら次々と先に進んでいきたいところではありますが、そんな固定費が出るわけもなく、黙々と一人作業をしていると時間の感覚はずれていきます。また、悪いことに米アップル時間でappStoreのリリースタイミングなどが変わりますので、微妙な時差感がよけいに感覚を狂わせます。これはそのうち慣れるでしょう。

   経済的な部分もですが、なんだかんだとギリギリの綱渡りが続いています。見通しが立ったかなと思ったら、その見通しが別の方向から断ち切られて、今度こそヤバいぞと思っていたらこれまたとんでもない方向に微かな道が続いていそうな気配を感じているところです。シナリオあるんじゃないの?これ。というくらいギリギリな場所をギリギリでこじ開けている感があるので、シナリオライターを見つけたら説教してやろうと思っています。この顛末は、またいつか落ち着いた頃に書ければと思いますが、凄く嘘くさいものになりそうです。

   さてそれはそれとして、昨年末からちょこちょこ金融機関に融資のお願いに行ったりして、なんとか資金集めをと、できる範囲で奔走しているのですが、基本的に話にならないというのが身に染みる結果になっただけでした。もうこれは仕方のないことであって、世代交代を待つ以外にないのかもしれないんだなという諦観に至ってしまいそうなので、やや危惧しています。

   日本は技術の国です。少し前でしたら海外から見たら日本の代表的な輸出製品はトヨタ、車でしょう。今は漫画、アニメではないでしょうか。これも技術です。違いは車は物理的に目に見えます。大きな工場、大きな機械、多くの人たち、だからわかりやすかった。昨今の漫画やアニメはデジタル化がかなり進んでますので、物理的に見えない部分はとてもたくさんあって結果としてできていた物しか手に取ることができない場合もありますし、物によってはiPhoneやパソコンの中だけで完結するものもあります。漫画、アニメはソフトウエア産業です。これはアプリケーションも同様です。プログラマーか絵師かという具合です。いずれもデザインが入って、プログラムであればユーザインタフェースが整えられて使いやすくされますし、アニメや漫画もアートディレクションが入り整えられます。これらの行程は工業のように分業化は非常に難しく、する方が非効率であり、よって往々にして並列で行われるため、大きな機械や大きな工場、多くの人たちは不要です。こうしたソフトウエア産業では、一つのプロジェクトに参加する人数が増えれば増えるほど、その納期は遅れる傾向にあります。だから少人数で、結果的に先鋭なわけなのですが、実はジレンマがあります。最初に金融機関などに見せられる物が物理的なものとして無いために、少人数でやらざるを得なく、それが故に少数先鋭になってしまった、ということもあります。本来であれば、そうした少数先鋭の中に若い人々を入れて、刺激と知識と知恵を勝手に盗ませて覚えさせ、そこからさらに次の少数先鋭チームを作って、という循環が欲しいのですが、それには固定費がかかるためやることはあまりありません。

   客観的に目に見える物があれば、何であれ話は早くて理解も早いのですが、ことソフトウエア産業に至っては理解を拒絶する反応が極端に目立ちます。デザイン関係の場合は、大手取引先の名前でも出せば本当にそれだけで済むのですが、ソフトウエアはまるで駄目です。ところが窓口にしてもなんにしても、どこへ行ってもパソコンはあって、みんなそれを使っているのです。ハードウエアに価値は見いだしているのに、ソフトウエアにはその価値を見ていない。しかしハードはソフトが無ければ何もなりません。

   先だって金融機関においてもいずれもまずiPhoneを知らない、触ったことがない、いやそっち方面は全く疎いので…という有様です。経済的なインパクトにおいて、iPhoneに限らずスマートフォン市場の拡大はKindleも含めると産業革命に匹敵するほどのものをもたらしつつある時期です。これからその黎明期に入って行こうとしていると感じています。30年後の2040年に、2010年を歴史として振り返ったとき2010年からの変化というのは地続きで明確な物になっていると確信しています。そういう時代です。

   さて、そうした現況の中、私はデザイナーとして15年ほど広告業界の末席に居たり居なかったりと中途半端な立ち位置で、様々な経験をさせてもらってきました。使えるリソースが自分の中にけっこうある、ならばなおのこと、やらない後悔よりやった後悔の方が気分がいい。そういう自己満足的な理屈で猪突猛進中です。もちろん金融機関にはそんな理屈は通用しませんし、結局現状では何もわからないし、身近な物ではない上に、触ることができないので商売になるとは思えないといわれ、へこたれることが多いですが数字になればまた話は別でしょう。ところが数字になったときにはもう借りる必要もないわけですので、借り入れすることも無く済むでしょう。大きい工場もなければ大きい機械も不必要なので、設備投資も知れてます。人件費だって抑えてて済むならその方がいい。

   ITバブルの頃のように、理解できない物に対して理解できないまま投資して消えるよりはずっとマシかもしれません。あのとき投資されて出てきたサービスで、今も残っている国内のサービスを私は知りません。

   身体一つが資本なのは、一抹の不安はありますが、やるだけやって生き恥さらしながらも突き進むのは、筆舌に尽くしがたいものがあります。簡単な言葉ですが、とてもとても、楽しいです。